ご家族の方へ

強迫性障害と共に生きること

強迫性障害は疾患の特性上、同居するご家族の支援が強迫行為と重複することがあります。洗浄や確認を手伝う、代行する、安全を保証するなど、生活を維持にするには仕方のない側面もありますが、双方が疲弊するだけでなく、症状そのものが悪化する要因となることで知られています。このような状態を巻き込まれ(accomodation = 誰かのために配慮して合わせること)と言います。習慣化している巻き込まれは、双方にとってやめられないと感じられることでしょう。まずは、このような状況がよく生じることを知っていただくことが必要だと思います。

止めればいいのか、見守ればいいのか

基本的に、ご家族が本人の強迫行為を手伝うことは、症状を悪化させるとされています。とは言っても、多くのご家族は、分かりつつも、ご本人の望むことに応じているのだと思います。本人がパニックを起こしたり、強迫行為が長くなったりするから、ご家族は共に生活するために、ご本人を手伝わざるを得ないのではないでしょうか。ご本人も家族を巻き込んでいることを自覚しているものですが、辛い強迫性障害に対応するために、頼める人がご家族しかいないというのが実情かと思います。長期間、ご本人に合わせる生活をしてきている場合、ご家族がその対応を変えることには不安を伴うでしょう。本人がパニックになったり、癇癪を起こすことを恐れている方も多くいらっしゃいます。強迫行為に合わせた生活は、双方にメリットがありません。一時的に不安や緊張を軽減しても、また不安が生じると、強迫行為が開始されてしまいます。今日行った行動は、明日行う可能性が高く、毎日続けた行動は、習慣化するのです。

ご家族も自己理解を!

巻き込まれはよくないと思いつつも、ご本人の不安から距離が取れない、求められると断れないというご家族も多くいらっしゃいます。その理由の一つには、自他境界線があります。人の感情に触れると自分も同じ気持ちになってしまう、先手を打ち、過度に求めるものを与えることで、人をコントロールする、過干渉になるなどは、将来的に関係の問題を大きくします。不安になると人は必死になり、場合によっては退行(子供返りのような状態)することも少なくありません。巻き込まれが深刻化したご家族は、ある意味頑張り屋さんであり、共感性が高いとも言えます。ご家族自身も、書籍やカウンセリングなどで自己理解を深めていただくことは、一見関係のないことと思えるかもしれません。私の経験では、ご家族の姿勢が変わると、強迫性障害の症状が変わることはよくあるように思います。

いつ支援機関に連れて行けばいいのか

ご本人が症状を改善したい、現状を変えたいと思った時に、支援者と出会えることが理想的です。現実的には、ご本人がそう思っても、近くに支援者がいない、または、本人が治りたいと思ってくれないというケースが多いように思います。電話やインターネットを介して相談に乗ってくれる機関があれば、利用してみることをお勧めします。ご本人が治療を希望していない、または、希望はしているけれど、支援者には会いたくない場合には、まずはご家族が支援者とつながってみてください。強迫性障害は、家族の影響を受けやすいもので、症状が家族関係の中に入り込みます。病気を正しく理解していただき、必要な努力と不必要な努力について、専門家から指導を受けると良いでしょう。

家族が疲弊している

家族が巻き込まれていたり、ご本人の癇癪、パニックが激しいと、ご家族が疲弊していきます。疲弊すると余裕がなくなり、ご本人に対する態度や関わり方がきつくなります。ご本人は、それがストレスとなって、強迫行為が増えるという悪循環が生じます。この悪化を見ると、ご家族は、悪化を防ぐために症状に合わせた生活するようになります。強迫性障害の辛さとは、ご本人、ご家族が疲弊していく点です。たとえ長期化していても、なるべく早く適切な支援を受けることと、ご家族が一時的に家を離れたり、息抜きをすることも極めて重要です。このような時にそう思えないとおっしゃる方が多いですが、距離を取ることが治療的であることが少なくありません。

癇癪に耐えられない

中には、ご本人が強迫性障害になったことに責任感を感じるご家族や、ご本人の癇癪、パニックに非常に強く動揺される方がいらっしゃいます。回復過程の中には、ご本人が不安や不快感に向き合うこと、それにより強くなっていくことが必要となります。あまりに変化に対しての不安が大きければ、どうしてそのように感じるようになったのか、これまでの経緯を振り返ってみると良いと思います。自分が感情に向き合えるようになると、他の人が感情に向き合う手伝いができるようになります。ご本人だけが変わるということは稀で、回復される方は、ご家族と共に変わっていかれます。

自傷行為

自傷行為は、自死の手段だけではなく、辛い感情を収めるために行なっている方もいます。批判するばかりでは、ご本人がさらに辛くなってしまいます。一方で、実際に大怪我をしたり、生命に危険を及ぼす状況に発展することもあります。特に、お酒や精神科の薬などを多飲し、酩酊状態にある時には、注意が必要です。生命の危険がある時には、医療機関、または警察への通報を検討してください。ご本人、ご家族が、取り返しのつかない状況に陥ることだけは避けなくてはいけません。その後の関係悪化の心配があるかもしれませんが、一時的であっても、環境が変わることで落ち着きを取り戻し、治療への意欲につながることもあります。

発達障害との重複について

発達障害(自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群) と強迫性障害の併存は珍しくはなく、こだわり、常同行動という点でも、強迫性障害の症状と重複します。専門家の間では治療が難しいと言われることがありますが、回復することは可能です。発達障害を持つ方でも、治療に取り組み回復される方はいらっしゃいます。治療の難しさがあるとすれば、発達障害が故の人間関係や社会生活のストレスがベースにあること、行動療法を行う際に、微細な変化に気付きやすく、そのストレスを強く感じやすい点などが挙げられます。苛立ちや焦りに伴う身体感覚に非常に囚われやすい方が多いように思いますが、そう言った感覚は一時的なものです。ストレスの反応によるものであることを理解し、反射的な行動をやめ、必要な行動を学んでいくことが重要です。発達障害を持たない方よりも、不安を強く感じている可能性があることから、治療のペースはゆっくり進める方がうまくいく傾向にあります。しかしながら、治療の方法自体は、通常のものと大きくは違いません。通常のカウンセリングで(曝露反応妨害法ではなく)、自分を理解したり、これまでの辛い経験を振り返って気持ちの整理をしていくことで、治療が円滑化することもあります。

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