強迫性障害の治療

強迫性障害とは?
強迫性障害の治療がうまくいかない理由
強迫性障害の治療
強迫性障害の再発を防ぐために

プログラムディレクターの挨拶

私は、2017年まで国立精神・神経医療研究センター(認知行動療法センター)で強迫性障害の臨床、研究をしてきました。これまでは治療を望まれる方の相談に多く対応してきましたが、昨今は薬物療法や認知行動療法で良くならなかったというご相談が増えています。症状は一人一人違い、アプローチも異なります。

症状評価

まず、主に困っている症状を確認し、どの程度生活に影響があるのかを把握します。強迫行為には、ご本人ならではの意味と文脈がありますので、この点についてもお話を聞きます。発症の契機、症状の悪化要因、並存している問題(発達障害、愛着障害、人間関係など)などもお聞きし、治療の計画を立てます。認知行動療法、曝露療法がスタンダードではありますが、場合によっては通常のカウンセリングで強すぎる不安について理解を深めることや、家族関係を見直すことが有効なことがあります。特に、幼少期から継続している葛藤やトラウマがある場合、こちらの治療を優先することがあります。

強迫性障害について学ぶ

曝露療法の導入可否に関わらず、強迫性障害について知っていただくことが重要です。多くの方は、自分自身が崩壊しないために強迫行為を行なっています。強迫行為は短期的には不安を軽減したり、自分を納得させてくれます。長期的には、強迫行為は長時間化、複雑化することがほとんどです。そうは言っても、すぐには納得できないのが通常で、どうして強迫行為を手放せないと思っているのか、どこからそう思ったのかを知ることも重要な治療プロセスです。そして、強迫行為があなたの人生にとってどのような役割があるかを知ること、症状を分析する力を養うことも、極めて重要な取り組みです。

家族関係

強迫性障害は家族関係に大きな影響を与えます。家族関係が背景にあり、発症にいたる人もいます。強迫性障害の発症契機、悪化要因はストレスです。一番理解してほしい家族が理解を示してくれないことに傷つく本人、支えきれないと苦悩する家族の両者に、絶大な負担をもたらすのが強迫性障害の特徴です。良かれと思い、本人の強迫行為を助長することや、エスカレートした批判の繰り返しなどが、高確率で生じます。恥や何が正解かわからない戸惑いなどもよく起こることです。ご家族が本人の不安に向き合えない、逆に、怒りを抑えられない場合、ご家族にカウンセリングをお勧めすることがあります。ご家族の葛藤や緊張が軽減されると、本人の症状が軽減することがあるからです。

不安に強くなる練習

強迫性障害の回復過程においては、必ずと言っていいほど不安に対峙するフェーズがあります。曝露療法では、それを意図的に行いますが、カウンセリングにおいても、これまで避けていた問題に気づき、生き方を変えていく段階で戸惑いと不安が生じます。不安であってはいけないと思われる方が多いのですが、不安は人間にとって必要な感情であり、原動力です。不安は減らそうとすれば強くなる性質もあり、多くの場合は症状悪化という結果に終始します。治療の鍵は、不安に強くなること、不安を抱えたまま生きることなのです。不安に向き合い、リスクを取れる人が、成長を経験し、新しい世界を見ることができます。カウンセラーは、この難しいフェーズを応援し、効率よく変化を推移していけるように支援します。不安を抱えられるようになると、強迫行為を止める意欲が高まったり、必要を感じなくなっていきます。

自分は正常?異常?

長い間症状を経験していると、何が正しくて、間違っているのかがわからなくなります。普通の人はどれくらい手洗いをするのか、排便の時何回拭くのか、鍵の確認はどれくらいするのかなど、どの程度が一般的なのかわらなくなります。だから、治療もどこまでやればよいのか、目標が定めにくいのです。実際には、行き過ぎた部分を一般的なレベルまで減らせば十分で、洗浄や確認をゼロにする必要はありません。全く手を洗わないとか、外出の際戸締りをしないのは問題です。

バーンアウト

もとより、強迫性障害の方の中には、完璧主義的な方が多くいらっしゃいますが、治療においても完璧に治さなくてはと考える傾向があります。これまでの苦しみがあまりに辛かったり、家族の強い期待を受けて、絶対に治すだという勢いで治療に来られる方もいます。過度な期待や努力が、治療を妨げてしまうことがあります。カウンセラーは、この点にも注意して経過を見守ります。

新しい行動を身につける技術

繰り返しになりますが、人が自分の行動を変えることは楽なことではありません。脳は現状を維持する傾向(ホメオスタシス、脳の恒常性といいますが)があり、治療を始めてもすぐには変化しません。強迫性障害は習慣の病気です。そして、その習慣には不安、つまり生存の維持に深く関係しています。不安は本来、人の警戒心を高め、生存を維持させる役割があります。強迫性障害に不安が関与しているのですから、強迫行為を手放すことは生存の危機とも似て感じられることでしょう。だからこそ、不安を抱える力を高め、危険を冷静に分析することが必要なのです。

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