強迫性障害は完治するのか?

強迫性障害

強迫性障害(強迫症)の治療を10年ほど行っているが、「完治するのか?」という質問をよくいただく。我々の視点では、日常生活が送れるレベルであれば障害と言わないので、そこまでは回復し得るとお伝えする。これはあくまで支援者の視点で、当事者、その家族にとっては、曖昧な情報に他ならないだろう。一つ言えることは、完治というレベルの回復を追求すると、回復しにくい。その理由を説明してみたい。

考えてみていただきたいのだが、完治とは完璧な回復ということである。完璧を望むと、どんな気分になるだろうか?完璧に治ったらさぞかし清々しいと思うだろうか?確かにそうなのだが、完璧を目指しての取り組みとは、非常に緊張感が高く、治療ペースが常に気になり、思い通りに進まないフラストレーション、過剰な努力による疲弊、失敗ばかりが目につき、失敗しない方法を考えることで頭がいっぱいという状態になるのだ。崇高な目標を持つことは大切で、自分ならできるという自信を持つ方もいると思うのだが、その人に合ったレベルというものがある。

私は格闘技を趣味でやっている(嗜む程度)のだが、経験のある人、体格が大きい人には、どうやっても勝てない。これは、自分に余裕がなく、必死にやっているし、そもそも反撃する方法も引き出しが少なく、攻撃を読まれた上であしらわれてしまうのだ。もちろん、練習はしていくが、勝てない自分を責めて、体を壊すような練習を続け、ゆとりがなくなるほど格闘技のことで頭がいっぱいでは、続けることすら難しくなってしまう。新しいことを覚えたり、攻撃を食うこと自体でも、メンタル的なダメージや負担が伴う。

強迫性障害を乗り越えるには、新しい不安、不快感との戦い方を学んでいただく必要がある。戦い方なので、あまりに無理をするとモチベーションを無くしてしまったり、不安が極度に高まり、そこから不安に向き合うことをやめてしまうかもしれない。私流に言うと、完治を目指すなら、プチ回復を目指すこと、それを続けること、自分でできるプチ高揚感を大事にし、焦りや自責を過度にしないことが、完治につながる。

回復過程は実にさまざまなので、まずはよい治療チームを構築することから始めてみて欲しい。治療の方法も大事なのだが、治療に対する心構えも同様に大事だと私は思う。

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