自他境界線の引き方

愛着・心理発達

自他境界線に興味を持つ人は、アダルトチルドレン、HSPに自分が該当する、または、生きにくさや人間関係の辛さに葛藤する方だろうか。パワハラ、モラハラ、カサンドラ症候群などに気づき、書籍などで学ぶうちに自他境界線に気づく人もいることだろう。心理学の歴史として、成育史に焦点を当てるアプローチがあり、親子関係を振り返ることに納得する方もいれば、過去に嫌悪感を抱く人も、今現在できる解決方法を知りたいと思う人もいるだろう。カウンセリングをやっていて、この辺りのニーズと興味は、人によって違うものだとよく思う。

私が自他境界線について知ったのは、臨床心理士になるよりもずいぶん前のことだ。20代の前半に、「許し(自分、他人)」をテーマにしたセミナーテープを聞いたことに始まる。そこで、自他境界線について聞き、バウンダリーズという書籍を読んだ。自他境界線とは、文字通り他人と自分を分つ境界であるが、所有物だけではなく、精神的な距離感をも含む。親子関係、夫婦関係、上下関係の問題には、ほぼこの自他境界線の問題が関与する。なぜかというと、自他境界線が曖昧であったり、強固であったりすることで、人は必ず葛藤を抱くからだ。

人はそれぞれが人間関係のスタイルを持っている。大きく分けると、近い関係を好む人、人と交わらず孤で生きたい人の2種類だ。問題は距離が近すぎる、遠すぎる時に起きる。距離感が近いということは、自分と他人の区別がないということだ。どういうことかというと、他人は自分の心の中にいるので、他人が自分と違う人間だと思えてない。厳密にいうと、文字通りこのように考えているわけではないが、自分と違う考えを持つ人に強い嫌悪感を抱く、相手を修正するためにあらゆる手を尽くす人がいる。人は自分の世界にあるものは、支配下にあると考える。結果的に、自分の心の内側にある他者を支配していても、違和感を覚えない。コントロールできない現実は辛い感覚を伴うが、それが見捨てられ不安として経験される。

逆に、孤で生きたい人は、他者が自分の領域に侵入してくることに、嫌悪感や不安がある。自分の話をしたところで何も得られるものはなく、助けを求めようと考えること自体を無意味だと考える。他者を信頼してガッカリする、感情を揺さぶられるくらいなら、1人でいる方がずっと楽だと考える。自己完結的な生き方は、その人が思っている以上にストレスフルであり、無理を自分に強いている。そう思うことにも嫌悪感があるので、より1人で努力し、防御を固めていく。

これらの問題に気づくことがまず第一歩である。気づいている人は、そうでない状態よりも大きく前進している。実際に、自他境界線を見直すことは生き方を変えることと同じで、とても難しいことでもある。愛着理論においては、これらは人生の早期に獲得された人間関係のパターンで、親に合わせることによって形作られている。人間は一定の年齢に達するまで、親からの分離は不可能であるし、実際にそうすれば死を意味する。なので、生き延びるためには、親に合わせて、なんとか世話をしてもらわないといけない。そのために覚えた人間関係の雛形が幼少期にあるという考え方だ。だから、変えようとすると、自分がどうかなってしまうかのような苦痛が生じる。

実際には少しずつ、今までとは違うことを試していくことが良い。そうすることで自分が楽になっていく、意味を見出せるようになっていくことが重要である。人は元の状態に戻ろうとする性質があるので、変われない時があっても自分を責めすぎないことも大切。自他境界線は、自他の中で育まれるものなので、自他境界線をある程度確立した人に付き合ってもらうと、コツが掴みやすい。自分を大切にすることや、他人を許すことを、体で体験できると、違った世界を経験できると思う。

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