親子間の自他境界線

愛着・心理発達

自他境界線とは、人と他人とを別つ境界線を意味している。今回は親子間の自他境界線について書いてみたい。生まれたばかりの時、子供は自他境界線を持っていない。その後の養育者との関わりの中で、自他境界線は形作られていくことになる。誰もがじた境界線の不全をどこかしらに持っていものだ。その不全は、関係性の中に投影される。その場合は、少しずつ対人関係を変えていくことを意識すると良い。それでは、親子間の自他境界線の役割について説明してみたい。

① 関係を維持する力を身につける

子供は自分の心が親に見えていると感じている。子供は、自分が好きなことは他人も好きであり、自分が思っているように他人も考えていると思っている。徐々に、自分の考えは独自であり、他人に同意をしてもらうためには、交渉したり、説得する必要があることを学んでいく。これを無視する人は、対立、支配、操作を関係の中に持ち込むことになる。当然、関係はいつか破綻することになる。大人になっても、この他者性を尊重できない、したくないという人がいる。これは、他人が自分と違うのはわかっていながら、領空侵犯していることになる。言葉を変えると、これを「甘え」という。この場合には、少しずつ子供の要求に応えることを待つと良い。「今、ちょっと手が離せなくて」、「ごめんね、疲れてしまったから1時間後でもいい?」という具合に、要求の保留と意見の相違を受容できるように意識していく。この際に、極端な癇癪や子供返りを見せることがある。心がつながっていないことを知ることは、怒りと悲しみを伴うということと、そこで姿勢を極端に変えないことが重要だ。

② 感情を調整する力を得る

他人は自分の心を見渡せない。自分の要求や依頼を叶えるためには、相手の心情を鑑みて、説明をする必要が生じる。ここで、子供は自分の内面を言葉に変えていく力を身につける。自分の心を見渡す力をメンタライゼーションというが、このメンタライゼーションが感情を調節している。言葉にすることで、感情は治まっていくし、助けや共感も得ることができる。言葉が付されていない感情や思考は、消化されにくく、激しい反応を伴いやすい。感情が爆発してしまったり、抑圧して過緊張や抑うつを産む場合もある。感情を言葉に変えていくためには、共感的、かつゆとりのある人と話をする習慣を持つといい。初めは何を話したらよいかわからないし、話せないことへの戸惑いもあるだろう。感覚としては、楽器や歌を習う感覚を想像すると良い。初めは、楽譜が読めなかったり、指が動かないので、とても辛いし、つまらない。徐々にこれらがわかっていくと、楽器や声で表現ができるようになる。この時には、きっと手応えを感じるはずだ。

③ 他者の批判に耐え、独自性を維持する

他人は自分の考えを100%わかってくれる存在ではないことを受け入れることは、子供にとっては大変大きな試練である。思春期で、親と対立するのは、親の限界を受け入れる過程でもある。ここで、100%子供を理解してしまう親だと、子供は対立したり、批判されたりする免疫が養われない。親は子供に対する期待があるし、子は親に自分の要求を飲ませたいという思いがある。それが対立することで、思春期が成立する。反抗期が不全であると、自分の欲求を抑えられないか、否定に非常に敏感になる。否定ばかりすると、やる気はでないし、抑うつに状態になってしまうかもしれない。しかしながら、ある程度の批判には耐える必要もある。少しでも本人の意思に反する意見を言うと、即居場所がなくなった、拒絶されたという反応を示す人もいる。罪悪感を押し付けようとすることもある。これは、思い通りにならない現実に対する怒りと悲しみの表出なのだと覚えておこう。

④ 自立し、自分を管理する力を身につける

子育ての最終的な目的は、自立させることである。あまりに親が肩代わりをしてしまうと、失敗して立ち直ったり、やらかして責任を取る機会を失ってしまう。失敗の痛みは、その人を成長させる側面がある。一方で、失敗することで自分の世話が後で増えることを心配したり、罪悪感を感じる人がいる。痛みの肩代わりは、いつしか負担になるので、恩着せがましくなったり、相手を責めたり、突き放すことにつながっていく。子供が癇癪や怠惰になると、そのツケが親に回ってくることがある。「なぜ我が子は自分をこんなに苦しめるのか?」とさえ思えてしまうことがあるかもしれない。引きこもってしまったり、物を壊したり、よからぬ人たちと付き合いを始めたりすることもあるかもしれない。特に思春期以降は、無条件の受容よりも、誰かに貢献することで得られる評価が主体になっていく。お金の無心、暴力、支配関係などは、自立に対する葛藤と恐怖が背景にあり、必死の抵抗を見せることもある。この葛藤をくぐり抜けるには、親子共に相当のエネルギーが必要であるため、問題意識のある人が支援につながることも重要である。

他人は変えられないとか、変えられるのは自分だけだとかいうことは、よく聞く言葉だと思う。親子関係においては、親子間の自他境界線は、お互いの関わり方を見ると知ることができる。基本的に、子供は親を必要とするため(幼少期の子供は1人で生きていけない)、子供は親に接近をしてくる。その時に、子供が近づいてくることに違和感を覚えたり、場合によっては嫌悪感を感じる人もいる。人との距離感を開けて生活してきた人にとっては、子供という自分を必要とする存在ができたことに戸惑いを覚えるのだ。逆に、子供が考えていることが手に取るようにわかる感覚があったり、子供の欲していることを全て叶えてあげたいと思う人もいる。親であれば、当然の姿勢かもしれないが、過剰に子供のニーズを満たそうとすることは、自立を遅らせることにもつながる。

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