摂食障害

摂食障害は大きく分けると、

  • 体重の制限を過度に行う神経性やせ症 (anorexia nervosa:AN)
  • 過食、および体重をコントロールするための嘔吐などを行う神経性過食症 (bulimia nervosa:BN)

とがあります。

神経性やせ症は、

  1. 著しい低体重
  2. 体重増加や肥満に対する恐怖
  3. ボディイメージの障害
  4. 体重や体型が自己評価に過剰に影響する

ことであるとされています。

神経性過食症は、

  1. 過食
  2. 体重増加を防ぐための不適切な代償行動
  3. 体重や体型が自己評価に過剰に影響する

などが特徴です。治療法として、栄養療法、心理療法などが用いられることがあります。

摂食障害の背景には、発症に至るまでに様々なことが関与しています。一般的に、摂食障害を発症される方は、妥協することがなく、達成動機が非常に高い方が多いです。そのような方は、無理をしても気付きにくく、限界を超えた時には、燃え尽き状態であったたり、抑うつ状態で身動きが取れないところまで、自分を追い込んでしまう方が少なくありません。

周囲に頑張りすぎだと言われても、手を止めることや時間を無駄にすることが大変に耐え難く、食行動の制限に加えて、勉強、仕事、家事などに手を抜けない方がおられます。発症前から、耐えている感覚なく、努力したり、没頭したりができるため、ネガティブな感情をより自覚しにくかったこと方もいます。自分の感情(不安、怒り、悲しみなど)に気付きにくい状態を失感情症(アレキシサイミア)と言います。

心理療法においては、心の中の物差しを見つめ直すことが摂食障害の治療になり得ます。TCBTではMentalization Based Therapy (メンタライゼーションベーストセラピー)の手法を用いながら、自分に向き合うお手伝いをしています。メンタライゼーションとは、自分や他人の心を見渡す力のことを指しています。摂食障害においては、このメンタライジング力が落ちてしまいやすいことが知られています。簡単に言いますと、心の中にあるものを言葉で表現する力を高め、自分の心の状態に気づく練習をしていきます。

心の中の状態に気づかないのは、スピードメーターとブレーキがない車を走らせるのと似ています。スピードは出せるけれど止まれない、何キロで走っているのかわからない状態では、いつか車そのものが壊れてしまうか、事故を起こして今います。これを人間に置き換えれば、低体重や体力低下、抑うつなどが事故に相当します。このような状態になると、進路や仕事に影響をきたす可能性が高く、自責や不全感が理由で休むことができなかったり、学校や仕事をやめる結果になった際に立ち直ることが難しくなることがとても多いです。

心の中の世界が見渡せるようになっていくと、ストレスが減っていきます(ストレスがなにか分かれば、対処が徐々にできるようになりますので)。結果として生きやすくなりますので、食行動に頼る必要性が減っていきます。治療が進んでいくと、自分は随分無理をしていたようだと気づくようになられる方がとても多いのです。ダイエットや過食は、ある意味では生き延びるための方法であったことがわかっていくと、少しずつ渇望感や焦燥感も減っていきます。同時に、食生活やダイエットを適正な状態にすることへの葛藤に耐える力も身についていきます。

タイトルとURLをコピーしました