強迫症は、洗浄、確認、しっくり感の追求、縁起、不吉さの排除が過剰になり、生活に支障を来たしている状態をいいます。症状が悪化すると、安心やしっくり感を得るのに大変な時間を要するようになります。お子さんが強迫症を発症すると、家族にも強迫行為を手伝うよう要求したり、家族が進んで強迫行為を手伝うことがよくあります。これを巻き込まれと言います。
強迫症は思春期に発症、または重症化することが多いため、当然親子関係にも影響します。よくあるのは、親御さんの方が強迫症のお子さんの症状に踏み込めず、いつの間にか症状が悪化していってしまうパターンと、過剰な要求を繰り返し、親子関係が逆転してしまうパターンです。どちらか一方になるというよりは、両方を繰り返す家族もいます。
強迫症が重篤化すると、親子関係が非常に密着し、症状の巻き込まれに慣れていってしまう家族が少なくありません。お互いが強迫行為は大変だと思っていますが、そうするしかないと思うようになるのです。元々は清潔さや安心を求めていたのが、逆に不安要素を探して予防的に強迫行為をするようになります。このよう中で親子関係が密着すると、強迫症でない人との交流がなくなり、何が正常なのかの判断がつかなくなってしまうのです。
このような状態が長く続いた家族は、巻き込まれが良くないとわかっていても打つ手が全くないのだとよく言われます。これまでと同じように強迫行為をし、家族がそれを手伝えば、強迫行為はさらに習慣化し、強固なものになっていきます。強迫行為が長い人は、不安が非常に高く、強迫観念の非合理さを指摘されたり、受診を促されても、冷静にそれを捉えることが難しいものです。
学校や社会から遠のくと、一時的に症状が落ち着くことがあるのですが、ここで安心して長期間経過してしまうこともめずらしくありません。ぜひ、家族だけで抱え込まず、受診とまでいかなくても、外部の人と話したり、意見を聞く機会を持っていただきたいです。少し気持ちが軽くなったら、医療機関、保健機関などに相談してみてください。本人が受診せずとも、相談できる場合があります。私のところにも、ご家族だけで相談にみえる方が一定数います。
すこしでも、良い方向に進んでいかれることを願いつつ。