【強迫症】治療のモチベーション

治療に訪れる方から、「強迫症は完治するのか?」という質問をよくいただく。回復の幅は人それぞれではあるのだが、当事者、家族にとっては、曖昧な答え方に他ならないだろう。一つ言えることは、完治というレベルの回復を追求すると、回復しにくいということだ。その理由を説明してみたい。

考えてみていただきたいのだが、完璧を望むとどのような気分になるだろうか?完璧を目指す取り組みは、非常に緊張感が高まり、治療のペースに一喜一憂し、思い通りにならないフラストレーション、不安に動機づけされる過剰な努力、失敗しない方法を考えることで頭がいっぱいという状態にならないだろうか?崇高な目標や自分を奮い立たせることは大切だが、その人に合ったそれぞれのレベルというものがある。

強迫症とは、長期間儀式を繰り返してきたことにより、不安に対する感度が高まってしまう状態である。かつては曖昧にできていたことも、強迫症が重篤化すると、些細な不安でも耐え難くなってしまう。少し絵でも曖昧なことがあると気になってしまい、身動きがとれなくなる。これは回復過程に関しても同じことで、治療において不確定要素があると耐え難いという人がいる。強迫症の重篤化は、時間の経過の中で儀式が増加、習慣化していくことで起こる。習慣化した行動は、変えられない気がするし、とてつもなく大きな負担感がある(例えば、右利きの人(習慣的右手を多様している)が左手で箸を持ったら違和感が強すぎて、すぐに戻したくなってしまうだろう)。

強迫性障害を乗り越えるには、新しい不安、不快感との戦い方を学んでいただく必要がある。戦い方なので、あまりに無理をするとモチベーションを無くしてしまったり、不安が極度に高まり、そこから不安に向き合うことをやめてしまう。私流に言うと、完治を目指すなら、プチ回復を目指すこと、練習を続けること、自分でできるプチ高揚感を大事にし、焦りや自責を過度にしないことが、完治につながる。治療の方法も大事なのだが、治療に対する心構えも同様に大事だと私は思う。