【強迫症】受診のタイミング

強迫性障害

強迫症と言える状態になっても、必要な支援に辿り着かないことが多い。時間の経過と共に、確認や洗浄(形はさまざまでこの限りではない)は長時間化、複雑化する。それに従い、家族との衝突や日常生活への支障が増え、意を決して支援を求める人もいる。発症から長期経過してしまう理由はさまざまで、当初は強迫症と気づかなかった、相談先がなかった、何とか自分だけで完結できていていたという話をよく聞く。

家族が強迫症と思わしき状態にあるが、受診を勧めても拒否することがよくある。本人にとっては、否定や拒絶に受け取られてしまい、関係も症状も悪化の一途を辿るのが強迫症である。最初の相談先は、精神科、心療内科などの医療機関になることが多いが、薬物療法に対して否定的な見解を持つ人が少なくない。私は薬物療法は専門外であるが、心理療法よりは時間も費用も少ないため、まずは試していただきたいと思う。

専門の治療機関が好ましくはあるが、近隣に見当たらなければ、まずは孤立を避けること、そして強迫症について学んでいただきたい。TCBTでも動画を多数作成している。強迫症は習慣の病気であり、罹病期間が長い、または強迫行為への衝動が強い場合、習慣を変える手続きが必要である(気合い、我慢では変わらない)。よくあるパターンは、不安を減らすことが逆に強迫行為を増やしているケース(例:入浴が長くなるから入らない、結果的に汚れた感覚が強まり入浴時間が長くなる)と、強迫行為を一気に大幅削減して、後にリバウンドして悪化するケースである。

周囲が強迫行為を制止すると、激しい衝突が生じる。すると、この衝突を避けるために、家族が強迫行為の手伝いをせざるを得なくなる。これが症状を複雑化させる一要因になる。強度の高い曝露療法(家中を汚す、聖域をなくすなど)を行い、その後の強迫行為が爆発的に増えるケースもある。基本的に、初めはゆっくりのペースで、感触を確かめながらやり、準備を整えてから一気に強迫行為を減らすことが良いと私は考える。費用対効果を追求することは重要であるし、短期間の行動療法の効果を示した研究報告もあるのだが、全ての人に適応になるとは思えない。

というわけで、受診はなるべく早めに、少なくとも、良質な情報に触れ、強迫症について学んでいただきたい。知識を深めること、悪化要因を知ることが、強迫症を長引かせないポイントである。