児童思春期の強迫症 Q&A

強迫性障害

強迫症は、思春期の発症が多く、本人よりも家族からの問い合わせが多い。よくある質問のいくつかをここで紹介してみたいと思う。

強迫行為(儀式、確認、洗浄など)はやめさせた方がいいですか?

家族が合わせている部分、(強迫行為を手伝う、本人を荒れさせない)は、徐々に変えていくとよいでしょう。本人をコントロールすると、ほとんどは失敗に終わります。行動を変えることができるのは、本人だけです。しかし、合わせている行動(巻き込まれ)は、家族の方で変えることができます(とは言ってもかなり大変なことで、多くの家族はここに支援が必要になります)。強迫行為を停止すると、本人としては必要な行動を止められたと認識しますので、大変な緊張と反発を生じるのが通常です。家族は本人を荒れさせないように合わせるか、問題解決に奔走することになります。強迫症の家族対応の特徴として、衝突の激しさがあります。これは本人側、家族側に要因がそれぞれにあります。家族が疲弊しないこと、家族(本人もですが)が強迫の不安や葛藤に耐えていくためのサポート体制を作っていきましょう。

学校にはどう伝えたらいいですか?

当事者も家族も、周囲の人に症状や困りごとを話しても理解されないと思うことが多いです。しかし、周囲は実態を話してもらった方が安心します。強迫症は決して珍しい精神疾患ではありませんが、多くの人がその実態や関わり方を知りません。学校に症状や基本的に関わり方を説明したり、資料を提供すると、クラスメートや先生方が安心するかもしれません。関わり方がわからないゆえに、態度がそっけなくなってしまったり、冷たく見えてしまうことがあります。そうすると、疎外感が強まってしまい、余計に学校が辛い場所になってしまいます。家族も学校は理解してくれないと考えて、孤立を招くこともあります。必要であれば、専門家に簡単な意見書を書いてもらう、教師と連絡を取り合ってもらうなどの取り組みも有効です。

本人の癇癪や暴力にどう対応したらいいですか?

まず、感情的になっている時に、説得や議論をしないことをお勧めします。一時的に本人から離れる、感情的に落ち着きを取り戻すことが必要です。家族も限界に達すると、抑うつや不安が生じることがあります。強迫症の家族に関わるためには、ある程度のゆとりがないと難しいです。このためにも、家族が感情を吐き出せること、息抜きができることが重要です。そんなことをしている場合ではないと思う方が多いのですが、家族が強迫症の症状に影響を受けなくなること(心理的に)は、症状の軽減と同時に起こることが多いのです。

育て方が発症の原因なのですか?

発症の要因はさまざま(家庭外のストレス、本人の特性など)で、一つではありません。ただ、子育てを振り返ってみると、そこにヒントがあることは多いように思います。思春期に強迫症を発症すると、親への反発が強迫症と重なります(不安を訴えて、親に要求する、試すなど)。人には誰かに依存したい、世話をされたいという欲求があります。思春期には、自立心の芽生えから、親を離れていくのが通常です。しかしながら、保護される安心と親から離れられない制約の狭間で、身動きが取れない方は少なくありません。もともと素直で、親にあまり反抗しなかった場合、強迫症の激しい不安に親が耐えられないケースと、親の生き方や方針に上手に合わせていた現実に気づき(自分で決めたかったという恨みだったりします)、思春期に反抗が強く出るケースがあります。強迫症の対応もしかりですが、思春期の課題や親の役割について学んでいただくことが重要です。思春期が激しい場合、親だけでは抱えれないこともあります。無理せず、親の方が助けを求めていただきたいです。

薬は飲ませてもいいのか?

薬物療法は非専門領域であるため、あまり詳しく言及できないのですが、薬物療法が有効な方はいます(心理士の視点から見ていても、服薬を始めて症状が軽減していると感じるからです)。強迫症の症状を軽減することは優先事項ですが、将来に絶望していたり、不安があまりに強い場合には、精神科と連携した治療が効率的だと思います。過剰処方されるのではないか、薬をやめられないのではないかという質問が多いのですが、理解のある精神科医はきちんと配慮してくれますので、まずは相性の良い先生と出会うことから始めていただきたいです。

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