こんにちは、TCBTカウンセリングオフィスの新明です。本日は「洞察力と強迫症」をテーマにお話しします。
不安が洞察力に与える影響
強い不安を感じたとき、普段なら取らない行動や発言をしてしまった経験はありませんか?不安が落ち着いた時には、どうしてあんなことをしのだろうと後悔してしまいます。人は感情的になると、視野が狭くなったり、思考が止まったりすることがあります。このような時には、想像が現実のように感じられたり、問題解決方法のことで頭がいっぱいになったりします。その背景には、洞察力(インサイト)の低下があるかもしれません。
洞察力とは何か
洞察力とは、自分、他人、状況を深く理解することです。洞察は以下のような役割を果たします。
- 問題の原因を模索する: 問題が発生した原因やプロセスを多角的に分析します。不安が高まると、原因が単一的に見えてしまい、柔軟な対応が難しくなります。
- 他人の意図や言動を想像する: 他人がどのような意図で言動をとっているのかを考える力です。これが過剰になると深読みしすぎてしまい、かえって混乱を招くこともあります。
- 意思決定を支える: 自分の希望や欲求を洞察し、それを言語化することで意思決定が可能になります。これにより、自分に適した行動を選択できます。
- 成長機会を作る: 自分の得意不得意を洞察し、適切な挑戦を選ぶことが成長につながります。
強迫症と洞察力の関係
強迫症の症状は洞察力に大きな影響を与えます。
- 強い不安が視野を狭める: 不安は最悪のシナリオを想像させ、警戒心を高めます。しかし、不安が強すぎると、決めつけ、思い込みが増えます。そのような状態が長く続いていると、自分の判断を疑うことがなくなり、不安をコントロールすることも難しくなります。
- 儀式行為への没頭: 強迫症では不安や不快感を和らげるために特定の行動(儀式)に没頭します。儀式が過剰になると、納得がいくまでに多くの時間や労力を要するようになります。儀式を行っている時間は辛いため、その苦しみを逃れること以外考えられなくなってしまいます。
- 対人交流の減少: 他人との関わりが減ることで、一般的な常識や考え方がわからなくなり、強迫観念を疑わなくなります。これにより、強迫症が中心のライフスタイルになり、洞察する機会がさらに失われます。
洞察力を高める方法
洞察力を高めるためには、メンタライジング(自分や他人の心を想像する力)を意識することが重要です。メンタラジングはより対人関係上の洞察を指しますが、基本的な考え方は強迫症の治療にも大いに役立ちます。次のような練習が効果的です。
- Not knowing stance:自分のメンタライジングに対して、なぜそう考えたのだろう、他の人から見たらどうなのだろう、どういう意図でそんなことをしたんだろうと多角的な視点を持つ練習をしましょう。視点を変えることで、新しい気づきが得られることがあります。
- メンタライジングの偏りに気づく:自分の視点ー他人の視点、目で見える情報ー目で見えていない情報、直感的な判断vs熟考した上での判断、感覚での理解vs思考での理解など、自分のメンタライジングの傾向に気づき、両方の極が見えるように練習しましょう。
- 他人との対話を増やす: 他人との交流を通じて、自分の考えを客観的に見つめる機会を持ちましょう。自分の力だけで自己理解を深めようとすると、普段通りの見解しかできません。また、自分の考えや意図を他人にわかるように説明し、フィードバックをもらって修正することがメンタライジングをよくします。
結論
洞察力を少しずつ取り戻すことは、強迫症の改善において重要なことです。洞察が良くなることで、本来必要な行動、不要な行動の判断がつくようになり、自分にあった治療目標を考えやすくなります。生活の中で意識的に多角的な視点を持ち、冷静に物事を判断する習慣をつけることが大切です。
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