心の不調と思春期の課題

対人関係

心理療法で取り扱う問題は、感情問題と人間関係が中心になる。とはいっても、自分は怒りがある、悲しみがあると認識している人もいれば、感情そのものがわからないという人もいる。心の不調の背景には、未解決の感情問題と人間関係が見え隠れすることが多い。その中でも、長期間にわたって強い感情(怒り、悲哀感、虚無感など)がある、または突然に感情が沸き起こり戸惑う、人間関係に支障を来す(衝突する、感情を抑えることが辛い)経験をしている人がいる。感情には2つの役割がある。一つは防衛的側面で、安全、存在意義、役割などが他者に侵害される時に起こる。もう一つは、道具的側面である。怒りは他者を制する力であり、自己主張、自己防衛を達成できる。

感情制御の土台は、思春期にある。共感され、人に頼ることができた人は、感情が安定し、やがて自律に至ると言われている。思春期は、自己主張と親、社会との対立を経て、自我をより確かなものに育てる役割がある。親の価値観に適応することで保たれた安全から抜け出し、自分で選択することを始めるのが思春期だ。ここで重要なことは、自己主張をすることだけではなく、他者の意見を融合することである。自分を守りながら、他者とも折り合って生きていく高度な感情調整は、思春期の経験を基盤に達成される。

思春期を通過するには、向き合ってくれる大人が必要だ。ポイントは向き合うことで、完全に受け入れることだけではないというところだ。受け入れるだけでは、自己主張しか身につかない。思春期になると、親子の役割が逆転し、親が子の思春期に向き合えないことがある。子供は自己主張と共に怒りを親に表出するようにもなる。学童期はしつけや先回りでコントロールできた子供が、それを振り払うが如く、怒りを強く出すようになることがある。その怒りが出せないと、何かで抑えておかなくてはならない。感情を抑える手段が過剰となり、強迫性障害や摂食障害の発症要因になることがある。

幸せの定義はさまざまだ。だが、自分を大事にできる、人も大事にできる、不必要な緊張が生じない人生が幸せなのだと思う。親子間で、思春期に主張と妥協の練習ができた人は、とても幸せなことだ。しかしながら、大人になっても、未達成の思春期を乗り越えることはできる。向き合ってくれる人を見つけると言う点でハードルが高いが、主張と妥協を学び、自分の才能と欠点を許容する練習をしていくことで心理的な大人になっていくことができる。