自分がわからないときの心の整理法

境界性パーソナリティ障害

「自分が誰かわからない」「自分が何を欲しているのかがわからない」——そんな感覚に悩むことはないでしょうか? このような時、言葉にできない空虚感や不安感が押し寄せてきます。自分の心が見えないと、人間関係や仕事、キャリアにおいても葛藤しやすくなります。燃え尽き症候群や自信のなさの背景には、この「心の見えなさ」が大きく関わっていることが多いのです。

自分の心が見えないことは、スピードメーターのない車に乗っているのと似ています。制限速度内で走っているのか、急いで走り過ぎているのか、それがわからないと、どうしても落ち着きません。そして、自分の感覚だけを頼りにするのはとても疲れるものです。時には、自分の能力を持て余したり、限界を超えて走り続けてしまうこともあるかもしれません。

自分の心を理解することは、実は能力やスキルの一部だと言えます。車の性能を理解するためには、時速や馬力、燃費といった基準があります。人間が自分の状態を把握するには、人の心も他者のフィードバックや基準が必要です。誰かに「私の目から見たあなたはこうだよ」と教えてもらい、自分の思考や感情を理解していく過程こそが、心を知る始まりです。

たとえば、赤ちゃんが興味を持ったおもちゃに手が届かないとき、ぐずり始めます。このとき、大人が「このおもちゃが欲しいんだね」、「手が届かなくて嫌だったんだね」と言ってくれたなら、赤ちゃんはその感情に言葉を結びつけて理解し始めます。このように、私たちは周囲の大人からの言葉によって、心の状態を知ることができるようになるのです。

成長するにつれて、心の理解は他者との違いに気づくことへと進化します。自分の心と、周囲の人々の心は異なるものであることを理解し、自分が感じていることが必ずしも相手に通じるわけではないと気づくのです。だから成長するにつれて、自分のことを言葉で説明する必要が出てきます。自己理解や自己表現は、愛着関係の中で獲得されるのはこのためです。

残念ながら、周囲の大人に余裕がない場合もあります。家庭内で問題があったり、親が忙しすぎたりすると、子供は自分の心の状態を言葉にする機会を失うことがあります。その結果、不快な感情や葛藤に言葉が結びつけられず、その感情をうまく処理できないこともあります。カウンセリングで自分の話をすることは、不快な感情や葛藤を言葉で結びつける練習です。言葉で誰かに話をして、感情を整理し、何が問題かを理解することができるようになるのです。

私自身も時々、自分の心がわからなくなることがあります。そんなときには、1人になりたくなることもありますが、あえて誰かと話すように心がけています。心を整理するためには、誰かに話をすることで、自分の感情を客観的に見つめ直し、心を理解する手助けになることが多いからです。

コメント