子育てと愛着

愛着

夫婦や親子の相談を受けていると、子育てに不安を感じている、これまでの子育てが間違っていたのだろうかという悩みを聞くことがあります。夫婦で子育ての見解が違っていたり、夫婦の不和で子育てにゆとりが持てないという方もいます。または、子供が荒れてしまったり、精神疾患を発症した時に、子育てがとても辛いものになってしまうこともあります。子育ては人それぞれではありますが、子育てにある役割について書いてみようと思います。

子育てを考える時に、愛着という言葉がよく話題にあがります。愛着の心理学的な意味は、繋がり、安全基地ということになります。子供は生まれた時は、歩くことも、話すこともできないため、全面的に養育者に依存しなくてないけません。赤ちゃんは泣くことを通じて、養育者にお世話をしてもらいます。人間以外の動物は、生まれてすぐに歩き始め、身動きが取れるため、人間ほど親には依存しません。

動物たちは、自分より強い敵から身を守り、必要な食事を得なくてはいけないため、非常に警戒心が強くなります。人間が動物ほど、荒々しくならずに済むのは、言葉を話せるからです。言葉を使い、対話し、物事を分析し、段取りを立てて、対策を練ることができるから、人間は人間らしいのです。人間は親に世話をしてもらう中で、徐々に会話を始めます。最初は全く言葉を知らないわけですが、親が話しかけてくれる言葉を聞いて、徐々に模倣を始めます。お腹が空いた時に、お腹が空いたんだねと言ってもらったり、眠くなった時にねんねしようねと言われて、感覚と言葉が結びついていきます。

ところで、親が子供の気持ちを100%理解するのが必ずしも良いことだとは考えられていません。子供は親がわかってくれない時に、転んで痛かったとか、おもちゃが壊れたとかと説明をし、親の方もだんだん理解が追いついてきていきます。このような対話の中で、人は感情を言葉にしていき、言葉にすることで感情をコントロールする力を身につけます。愛着は安全基地だと書いたのですが、たとえ問題が解決せずとも、辛かったとか、嫌だったとかと話しながら困難な状況に耐えていくのです。

愛着とは、養育者との会話であり、その会話が関係性を表します。自分が言葉を発した時、過剰な反応が返ってくれば、聞いてもらうためにはより強い表現を必要とします。結果的に、感情を爆発させやすくなり、周囲との軋轢を増やします。逆に、無反応であれば、言葉を発することをやめてしまい、自分一人で物事を完結するようになります。いきすぎると、限界を超えても辛いと思わず、最終的に体調を崩す人がいます。

このような関係性は、誰もが親に世話をしてもらい、生き延びるために身につけてきています。子育てになると、子供は基本的に親に接近してきますので、元々持っている愛着が全面に出てきます。中には、子供が接近してくると感情的に落ち着かなくなったり、突き放したくなったりしてしまう人がいます。このような場合に、子育てが難しくなったり、過剰な世話をして疲れたり、逆に幼少期の子供に自立を促したりということが起こります。

いずれにしても、言葉でのやりとりを見直し、感情的な人は冷静に言葉にする練習を、共感できない人は、自分と子供の感情を感じる練習をしてくとよくなります。幼少期に学んだ愛着は、非常に強力で気付きにくく、変えようとすると強い違和感が生じます。生存するために身につけた考え方なので、変えると存続できなくなるような感覚になるのです。自分自身が、健康的な愛着関係を持てると、その関係を基盤にして子育てにも、夫婦関係にも応用できるようになります。子育ては本当に大変な作業の連続ですが、生き方を見直す機会でもあるようではないでしょうか。

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